任意売却は非弁行為になる?

2017年8月2日

任意売却をするにあたり不動産売却のプロに頼みたいと考えているが不動産屋さんに頼んでいいのか考えている方や、あるいは、不動産業を営んでおり任意売却の要望があるので任意売却を取り扱いたいと考えている方も多いとは思います。
このとき、心配になるのが弁護士法だと思いますので、この記事では「任意売却は非弁行為にあたるか」をまとめました。

非弁行為とは

弁護士でない者が報酬を得る目的で弁護士業務を業として行うことをいいます。これに違反した場合は非弁行為を行ったとして、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます(弁護士法第77条)。
弁護士法の条文では、以下のように規定されています。

第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

第73条(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

第74条(非弁護士の虚偽標示等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、弁護士又は法律事務所の標示又は記載をしてはならない。
2  弁護士又は弁護士法人でない者は、利益を得る目的で、法律相談その他法律事務を取り扱う旨の標示又は記載をしてはならない。
3  弁護士法人でない者は、その名称中に弁護士法人又はこれに類似する名称を用いてはならない。

任意売却は非弁行為になる?

「譲り受けた権利の実行」「虚偽標示等」にあたる?

まず、73条と74条については、任意売却において宅建業者が債権を譲り受けることはありませんし、当然弁護士や法律事務所を名乗ることもありませんので問題にならないでしょう。

「法律事件」にあたる?

弁護士法72条の解釈には2通りあり、事件性必要説と事件性不要説が対立が対立しています。
基本的には、通説・判例の事件性必要説をベースに考えて問題ありません。条文にも「事件」という文言が含まれていることからしても事件性必要説が自然です。

事件性必要説

通説は事件性必要説で、「広く法律上の権利義務に関し争いがあり、疑義があり、または新たな権利義務関係の発生する案件」であって、一般の法律事件と認めるに足りるほどに将来法的紛争となることがが具体的事情から明らかであると認定できるものに限るべきであるとしています。
これは、法務省、総務省、検察庁の見解で、さらに最高裁の棄却理由においても以下のように事件性必要説が前提とされています。

交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである。(最判平22・7・20)

過去の下級審では「争訟ないし紛議のおそれのあるもの」も「その他一般の法律事件」に含むとすることもありましたが、上記の判断では「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」という基準を用いており、今後はこの基準が引用されることが多くなるでしょう。

事件性必要説に基づいて考えると、任意売却は、債権者や保証人等の承認を前提としており、抵当権解除等の協力を得た上で物件の売却を行うことになりますので、権利義務自体に争いが発生する予定はなく、紛争となることが予想されるものではありません。

事件性不要説

事件性不要説は、事件性が無くても法律事務は全て弁護士の独占業務であり、弁護士以外が行うと非弁行為になるというものです。そうなると、「法律事件」の範囲は著しく広くなり、任意売却もその範囲に含まれる可能性もあるように思えます。
ただ、判例でも事件性必要説がとられており、事件性不要説はあまり考慮しなくても問題無いでしょう。

「他の法律に別段の定めがある場合」にあたる?

72条には「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」とあります。
宅地建物取引業法2条2項では、「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行う」が宅地建物取引業者の業務として認められています。そのため、不動産の売買にあたっては、その代理人として契約書の作成や価格の交渉等の不動産取引の媒介に必要不可欠な事務を行うことが出来ます。

任意売却もあくまで不動産の売却であり、宅地建物取引業者は代理と媒介を行うことが出来るので、債権者との調整も承認前提である程度スムーズにいく形であれば売買に必要な当事者間との調整の一部として、通常の不動産取引の代理・媒介と同様に行うことが出来ると考えられるでしょう。
ただし、債務者との交渉によって利息を減額して月々の返済額を見直すことや、任意売却後の自己破産等、不動産売買に含まれない法律事務はこれに当てはまりません。

まとめ

任意売却は通説・判例によれば「法律事件」にはあたらない

そもそも、不動産取引に関する代理・媒介は宅地建物取引業者の独占業務

通常の任意売却は非弁にあたらない

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